03.エッセイ 左手の写真家 佐藤 ケイジュ 書き下ろし

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写真家 佐藤 ケイジュの「脳卒中闘病記」

3.序章(我が写真との出会い)

長崎での撮影の仕事も無事終了し気持ちが軽くなったので、帰り道には来る時に寄れなかった撮影的に気になるポイントに止まりつつ九州自動車道を目指します。帰ってからの仕事の予定も有るのでそうそうのんびりとはしては居られないけれど、明日中に東京に戻っていればゆっくり後片付けもできるな・・・などと考えて、今日は岡山付近で泊まれるといいなという気分です。泊まると言っても、もちろん車中泊なんですがね。

「明日は早朝から移動を開始すると、昼過ぎに三重に寄れるな…」と考えていました。

ぜひ行きたいのは三重県の伊勢神宮。信心が芽生えたわけではないのだが、ここには私の写真が3点収まっています。伊勢神宮には内宮と外宮がありますが、私が行きたいのは外宮です。

幅4mクラスの写真なので、小型のテストプリント程度は手元にあるのですが最終形は未だ目にしていませんでした。
関係施設が出来て一年は優に過ぎていたのに、なかなか機会が無くて見に来られなかったので正に今回は絶好機と言えます。
そういうわけでその日は岡山付近に宿泊し、翌朝は三重県を目指して大阪を過ぎ京都の手前から南に進路を変えました。

やがて“いつか来た道”に入ります。

何故かちょっと緊張感。
例えが少し変かもしれないが、“生まれてから随分経つのに、初めて父親として名乗りをする”様で、嬉しくもあり怖いようであり逃げ出したくも有るがぜひとも会いたい、妙な葛藤が広がっていると言う感じです。

外宮に着き、満車とも見える駐車場になんとか隙間を見つけて車を止める事が出来、ゆっくりと参道を目指しました。初夏の日差しが眩しく、木々の緑が華やいでいました。信仰心の有無にかかわらず、自然が美しければ“神妙”な気持ちになれる様です。以前、撮影に伺った折に二、三度外宮は訪れましたが、そのたびに爽やかな気持ちになったものでした。

清清しい気持ちで参道をすすみ、ついに自分が撮った写真と対面することができました。
契約上、声高に自分の写真とは公言できないですが、“我が子”である事には間違いはありません。

しばらく展示されている会場を行きつ戻りつして、写真との出会いを堪能させて頂きました。
このあと写真のモデルになってもらった神社の森に立ち寄り、いささか思い出に浸る時間を持つ事ができました。

つづく

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