衿のごろつき
”ごろつき”って、柄の悪い人の事じゃないですよ。
今日の内容とは関係ないのですが、
この柄の悪い方の”ごろつき”という言葉を調べてみたら面白かったので、書いておこうかな。
江戸時代後期から使われた言葉で、住所や仕事が定まらず他人の家をまわる人を蔑む(さげすむ)ような言葉。「ごろ」は「ごろごろ転がる」と「うろつく」で「ごろつき」となったそうです。
テーマに戻ります。
今日の”ごろつき”は、着物の衿のゴロゴロのことです。
春に車で旅をしたときに、秋田の道の駅で買った久留米絣の仕事着を、7月の紅花摘みに着られるようと思って洗濯したら、衿回りがどうにも落ち着かない。そう、ゴロゴロと”ごろつき”があって、撫でても引っ張ってもどうにもならないのです。
日本人は、曲線を出すときでも布を切り取ったりしない仕立て方をします。
余る部分は、綺麗にダーツをとったり(袖の丸みとか)折り込んで(内揚げや、衿肩周り、または衿そのもの)なかにしまって仕立ててあるので、その折り込んだ布が中で綴じられていないと、中で遊んでしまって、ごろごろになって表に響くのですね。
折り込むことで厚みが出て、とても合理的な仕立て方です。
そういう訳で、夏に解いて直した時の写真を見つけたので、アップしようと思います。
1)衿の内側のくけを解きます。
2)衿の中心部分です。(向こう側が身頃で、背中心部分ですね。)
3)ほら、皺になっています。(衿肩あき右側付近/わかりにくいので、赤で囲みました。)
4)ここも。(衿肩あき左側付近)
5)ここも。(衿肩あき左側/上の写真と同じ場所を引いて撮ってあります。)
6)上の写真とほぼ同じ場所ですが、
ちょっと衿先の方まで下がったところで、下まで響いてしまっています。
中で折れて皺になり表に響いていたのですね。
7)ですから、きれいに皺を伸ばします。
8)この折れ線も、
9)伸ばします。
10)中心部分です。着たときに首にくる部分です。ここが”くたっ”としないように、芯になるものを入れるのですが、入っていなかったのかしら?と思って、布巾に使っていた布を台所から持ってきて入れました。(ちょっとまだ、紅花の黄色が残っているみたい。)
繕い終わってから、縞の木綿がころがっているのを発見!!!(写真)きっとこれが芯として入っていた布に違いありません!ぐしゃぐしゃになっていて、これも、ごろつきの原因ですね。
11)中で動かないように綴じます。
(ここをたたんで衿をつくるので、気持ち内側をつり加減にすると、たたみ易いかもしれません。)
12)こんな感じにしました。(針が表に出ないように針を打つのに、下に厚紙みたいなものを置くといいです。手近にあった葉書を使った様子。今さらながら反省。。。)
13)洗っても中で布が動かないように、こんな風にとめてみました。
(とめる糸は、”しろも”という糸を使いますが、要はすべらない糸がいいと思います。)
14)こっちもとめる。
15)布が遊ばないようにとめたら、元に戻して綴じていきます。
16)縫いぐけに。
17)”ごろつき”がなくなりました。
18)完成です。
衿には「共衿」(「かけえり」などともいいます。)がついています。
衿周りはどうしても汚れや傷みが出る場所なので、取り替えられるようなつくりになっているんです。
洗ったけど汚れは残っていたから、この機会に取り替えてもよかったかなぁ・・・と、この記事を書きながら思っていました。
今日のレポートは以上です。